Gaiax STARTUP STUDIO 佐々木幸徳「ノーコード開発の役割を見極めろ」

ノーコード企業

非エンジニアにもソフトウェア開発の門戸を広げ、仮説と検証のサイクルを早めるノーコード開発は、新規事業を立ち上げる際の敷居を下げる手段として注目を集めている。実際に、スタートアップから大企業に至るまで、様々な企業がMVP(Minimum Viable Product=実用最小限の製品)を開発する際にノーコードツールを利用するようになった。

一方で、ガイアックススタートアップスタジオの佐々木喜徳氏は、ノーコード開発は発展途上の技術であり、その長短を見極める必要性があると指摘する。過大評価も過小評価もされがちなノーコード開発を、最適な形で活用し事業を成長させるためには、どのような視点が必要となるのだろうか。

ガイアックスの知見をもとに改めて考える、ノーコード開発の役割とその将来を。

 

【佐々木喜徳】
組み込みOS開発やテクニカルサポート業務の経験を活かし、フリーランスエンジニアとして独立。その後、フィールドエンジニアリング会社の役員経て2007年からガイアックスに参画。スタートアップスタジオ責任者として起業家への壁打ちや投資判断を担当。また兼任して技術本部長として、ガイアックスで生まれるスタートアップの技術支援や組織のエンジニアリングの戦略に取り組んでいる。

 

MVP開発に威力を発揮するノーコード開発

 

-はじめにガイアックスのスタートアップスタジオについて教えていただけますか?

「Empowering the people to connect ~人と人をつなげる」というミッションを持つガイアックスは、創業以来、人と人との繋がりを深めたり、広げたりする事業の開発に注力してきました。

ガイアックスのスタートアップスタジオは、新規事業開発部門と投資部門を組み合わせたような部署であり、社内外の新規事業に対して出資をする他にも、エンジニアリングやバックオフィス関連の各種サポートプログラムを提供しています。

 

-スタートアップスタジオでは、ノーコードツールをどのように活用しているのですか?

一般的にスタートアップでは、はじめにMVP(Minimum Viable Product=実用最小限の製品)を作り、市場のニーズや反応を計測しながら「仮説」と「検証」を繰り返すことで、よりよいプロダクトを作っていくというプロセスで進められます。

私たちは、昨年の2月、コロナ禍によりオンライン飲み会の需要が生まれたことに着目して新規事業を立ち上げたのですが、その際に、Bubbleを使い数日でMVPのサービスをローンチしています。

その案件がガイアックスにとって初めてのノーコード開発の取り組みでしたが、実際にノーコードでMVPを作ったことでその有用性を実感しました。それ以来、新規事業でプロダクトを作る際は、ほとんどすべてのMVPをノーコードで開発しています。アプリ開発では、BubbleとAdaloをメインに使っており、LPの場合は、StudioやTildaを使うことが多いですね。

 

-ノーコード開発はどれ程の効果がありますが?

従来、MVPを開発する際には1か月から3か月程を要することが多かったのですが、ノーコードツールを使うことで、1週間から2週間でローンチできるようになりました。感覚的には、労力も時間も1/4程になるといった認識です。

 

-現状ではMVPの用途が多いのでしょうか?

現在のところガイアックスでは、ノーコードで作ったMVPにより市場の反応を評価し、「このサービスはいける」と判断したプロダクトをスケールさせる時にコーディングで作り直すというプロセスをとっています。

 

ノーコード開発の課題

 

-ノーコードから切り替えなくてはいけない理由やノーコードの課題について教えていただけますか?

プロダクトをスケールさせるタイミングでノーコードから切り替える理由として、UI、保守運用、サーバーなどの問題が挙げられます。UIに関しては、そのノーコード開発プラットフォームでは対応できないUI/UXを表現したい場合は、コーディングで開発するしかありません。

また、プロダクトの機能が複雑になっていった場合、ノーコードプラットフォームの管理画面で保守運用を続けていくことも現実的ではありません。

例えば、Bubbleの管理画面は、大量のワークフローを管理するために設計されているわけではないため、複雑な機能を、複数人で管理するのには限界があります。コードレビューもできないので、何か問題が生じた時に迅速に対応することも難しいです。

プロダクトがスケールしていった時には、サーバーサイドの問題も生じます。サーバー大規模のデータを扱うプロダクトになると、ノーコードプラットフォームの提供するサーバーでは耐えきれなくなる場合もありますから。

 

-ノーコードから切り替えて、改めて作り直すのにはそれなりの労力がかかりそうですね。

そうですね。スケーリングさせていく際にスクラッチでゼロから作り直すという作業は、かなりの労力を要するものです。そのため、今後は「ノーコードからコーディングに切る変える際のスイッチングコストをどれだけ下げられるか」といったことに注目が集まっていくと思います。

現状では機能的に不十分で様子見の段階ではありますが、Flutter Flowというノーコードツールはそれを実現しようとしています。ガイアックスではFlutterで開発をすることも多いので、ノーコードからシームレスに移行できる開発環境の整備には期待しています。

機能的な制限はあるものの、Bubbleでもプラグインを入れてコードを埋め込める機能が実装されていますね。

 

ノーコード開発の今後のトレンド

 

-業務用ノーコードツールも数多く生まれていますが、どのようにお考えですか?

ノーコードは、組織のリソースを有効活用し、業務改善につなげる手段としても非常に有効だと思います。例えばZapierは、各業務用ツールを連携させ、ツールを横断的して業務を自動化するのに優れています。

近年、日本の大企業や各官省庁の間でも、データやAPIを公開することで、データ資産を有効活用するというトレンドが生まれていますが、データ資産を社内外のシステムと連携して再利用いくという文脈においても、ノーコードツールは非常に有用だと思います。

 

-業務プロセスの自動化でもノーコードツールが普及するとなると、ノーコードツールを扱う仕事も増えそうですね。

ノーコード開発者という職業がどれだけ普及するのかは、現時点で分かりませんが、今後、ノーコードツールを活用して、ソフトウェア開発に取り組むノーコードエンジニアリングという仕事は必要になってくると思います。

現在ガイアックスでは、インターンを含めた4名が、ノーコード開発を主な業務として働いています。今後もガイアックスでは、ノーコード開発者のすそ野を広げ、彼らの活動をサポートする取り組みを注力していきたいと考えています。

 

-ノーコードツールは教育現場への導入も始まっていますが、教育効果についてどのように考えていますか?

ノーコードツールは、ハイスキルなIT人材を生み出すための、よいきっかけになるのではないかと考えています。はじめに扱いやすいノーコードツールに触れてみてアプリ開発に興味を持った後に、より高度なスキルをもとめて勉強を進めていくという学習の流れが期待できます。

今日のIT教育では、Scratchやレゴがファーストステップとして認知されていますが、その次にいきなりコーディングをするというのは、やや飛躍があると思っています。

コーディングの前段階としてノーコードツールを扱うことは、より自然な学習プロセスだと思います。ノーコードツールを扱うことで、ソフトウェア開発の基本を理解すると共に、誰かの悩みや課題を解決するという経験を積むことができます。

 

-最後に読者へのメッセージをお願いします。

これまでガイアックスでは、新規事業を生み出すためのワークショップを数多く開催してきました。良いビジネスアイディアがあっても、それを収益化させ、事業として成長させていくためには、相応のノウハウが必要になります。

ガイアックスのスタートアップスタジオでは、これまで数多くの新規事業を立ち上げてきた知見をもとに、アイディアの壁打ちからバックオフィスのサポートに至るまで、新規事業に対する包括的なサポートをおこなっています。

ノーコードに限らず、一般的な開発の知見もあるので、興味のある方は、一度、お気軽に相談して頂ければと思います。

 

ガイアックススタートアップスタジオ

大企業ノーコード

スタートアップスタジオでは、数多くの新規事業を立ち上げてきた経験を持つガイアックスのメンバーのノウハウの元、出資に加えて、事業開発・エンジニアリング・バックオフィスの支援などの包括的な事業支援プログラムを提供している。事業アイデア相談会「STARTUP CAFE」では、アイデアの構想段階から起業後の資金調達とパートナー探しのフェーズまで、無料で相談できる他、優れた事業案には200万円の出資を行う。

 

(文・飯倉光彦)