小学5年生の甥っ子にノーコード開発を教えてみた

みなさんこんにちは。ノーコードジャパンCTOの中です。日夜、ノーコード開発プラットフォームの開発に注力する日々ですが、ノーコード開発について質問を受けることも増えてきており、喜ばしい限りなのですが、なかには

 

「ノーコード開発を使うと本当に誰でもアプリを開発できるの?」

 

「なんだかんだノーコード開発をしているのはエンジニアばっかりでしょ?」

 

といった声も良く聞かれます。確かにノーコード開発ツールと言えども、それなりに学習は必要ですが、多くの人が思っているよりもずっと簡単であり、多くの人に気軽に使ってもらえるツールなのです。

 

「ノーコードジャパンのCTOとして、より多くの人達にノーコード開発の敷居の低さを知ってもらいたい!」

 

そんな歯がゆさを妻に話してみると

 

「そういえば、私の甥っ子がちょうどプログラミング教室に行ってみたいと言っていたわよ。せっかくだしノーコード開発も教えてあげたら?」と。

 

確かに、妻の甥のけい君は、マインクラフトが好きで、彼の作るマインクラフトの建築は、子供ながら感心する出来栄え。マインクラフトは、論理的思考力や構造把握力を養うための教育ツールとしても知られおり、けい君にはノーコード開発者としての素養があるかも知れない!

 

これは絶好のチャンスとばかりに、さっそく「ノーコード開発アプリ作ってみる?」と本人に聞いたところ「まぁやってみてもいいよ」とまんざらでもない様子のケイ君。

 

そうとなったらやるしかないです。

 

かくして、「実際に小学5年生がどれ程の出来のアプリを作れるのか」「ノーコード開発ツールの学習効果は如何ほどのものか」という好奇心を胸に、けい君へのハンズオン講習が始まったのでした。

 

小学5年生に教えられた盲点

 

サービスを作る時には、骨子となるアイディアがなければ始まりません。

 

まずは「どんなアプリがあったら良い?」「こんなアプリがあったら良いのにと思ったことはある?」とオープンクエスチョンからヒアリングを開始。

 

すると、けい君は「行きたいゲームセンターがマップで一覧で見れるアプリが欲しい!」と。

 

そんなのGoogle Mapを見ればよいじゃんと思ったのですが、よくよく聞いてみると

 

デパートや複合商業施設などにテナントで入っているゲームセンターの情報は必ずしもGoogle Mapに出てくるわけではなく、子供が行きたい思うゲームセンターの情報が網羅されているわけではないことが分かったのです。

 

大人からしたらGoogleで十分じゃないかと思っても、子供の視点からすると必ずしも欲しい情報が見やすく整理されているとは限らないということにハッとさせられました。子供に限らず、多くの人にとっての”ベストプラクティス”が特定の属性の人にとっては必ずしもそうではないということが世の中には溢れているのかも知れません。

 

その後もヒアリングを続けていき、けい君のアイディアの言語化を手伝うことで、少しずつアプリケーション像を具体的なものにしていきました。

 

そうして具体化されたけい君のアプリの内容は、マップ上でオススメのゲームセンターを探せるというもの。

 

自分のオススメのゲームセンターの情報をGoogleやインターネットから収集し、アプリ上でマップ上に表示させ、各ゲームセンターの詳細ページとリンクさせるといった機能のアプリで、ロジック自体はシンプルですが、小学5年生の初めてのアプリ開発としてはちょうど良い難易度かと思います。

 

データベース設計をどう教えるか

 

さて、アプリの骨子が固まった後は、アプリ開発に必要なデータベースを設計する必要があります。「データベースとは何ぞや」といった理論から入るのではなく、まずはGoogleマップを見ながらどんな情報を集めたらよいのか一緒に考えていきました。

 

「ゲームセンターの名前があるからデータベースに登録しようか」

 

「他にもゲームセンターの写真があるけど、写真は入れる?必要だったら登録しようか。」

 

「他に必要な情報はある?」

 

と聞いていくと

 

けい君は「住所も入れたい!」と。

 

その後も「その他、必要な情報はある?」

 

けい君「電話番号もいれたい」といった具合で、データベースの設計は進んでいきました。

 

「ゲームセンターの一覧の情報が欲しいのならCSVの一覧をそのまま使った方が良いのでは?」と提案してみたところ、けい君は「それだと行きたいゲームセンターが全部揃わない」と、過去に自分の行ったゲームセンターの情報をひとつずつ入力していきました。

 

こうして作ったデータベースを自分が見やすいと思う形で表示させていきます。

 

データベース設計が終われば後は、積み木を積んでいく感覚で各コンポーネントを組み立てていくだけです。

 

ここからのけい君の集中力には、非常に驚かされました。

 

けい君は、「電話番号はもっと大きく表示させよう」「やっぱり店名の色はこっちにしよう」といった具合に数時間ぶっつづけでインターフェースを組み立てていきました。

 

かくして、けい君が5時間程かけて完成したのが近くのゲームセンターを探せるアプリ「けーじろう」

 

Adaloの最低限の使い方は教えたものの、途中からは、作りたいものを明確にするためにサポートするだけでした。分からないことがあっても、答えを教えるのではなく、こういうこと調べてみたらと導線を引いてあげることを意識しました。

 

 

ノーコード開発ツールの教育効果

 

次にノーコード開発ツールの教育効果について考えていきたいと思います。ただし、私は教育の専門家ではないので、あくまでも一人のエンジニアの経験談としてご参考にしていただけましたら幸いです。

 

今回の甥とのアプリ開発の経験は、ノーコード開発ツールの教育効果を考える上でも非常に有意義な体験でした。

 

エンジニアの方の中には、子供にアプリケーション開発を教えるのならば、数学や情報工学を先取りして教えた方が良いという意見の人も多くいます。プログラミング能力やノーコード開発ツールの扱い方よりも、その挙動を裏付ける数学を教えることの方が重要だと。

 

確かに、その考え方自体は理に適ったことだと思いますが、子供の立場からすると将来何に役立つのか分からない抽象的な高等数学を学んでも、数学に対する関心が薄れてしまう場合もあります。

 

私自身も子供の頃、数学は好きでしたが、将来何の役に立つのか実感が沸かなかったことも多かったものです。

 

ノーコード開発で自分の作りたいものが明確になると子供のモチベーションに繋がりますし、必要に応じてアプリ開発に使われる数学を必要に応じて調べていくという逆算的な学習も捗ると思います。

 

ノーコード開発を教えるのならば、高等数学や情報工学を先取りして教えるべきだという考えを否定するわけでは決してありませんが、好奇心に基づいた知的活動の連鎖が学問と向き合う時の基本的な姿勢の形作るものだと考えると、ノーコード開発は、学習ツールのひとつの選択肢として有用なものだと考えています。

 

私が子供の頃は、GUIベースの学習ツールといえばスクラッチくらいしかなかったものですが、今は、子供でも扱える様々なノーコード開発ツールがあるので、教育現場への導入は今後も加速することでしょう。特に今のノーコード開発ツールは、アップルストアやグーグルプレイを通じて自分が作ったものを世界に発信できるため、貴重な体験が出来るのではないかと思っています。

 

また、ノーコード開発では、ロジックを設計する作業とそれが実際にどうアプリ上で反映されるのかを確認する作業がありますが、この体験には、「具体と抽象とを行き来する知的活動(帰納と演繹)」の挙動も自然と身についていくという教育効果が期待できます。

 

小学生がオープンソースプロジェクトに参加!?

 

今回のアプリ開発で開発者としての一歩を踏み出したけい君ですが、せっかくアプリ開発に興味を持ってくれたので、今後もアドバイスを続けていこうと思います。

まずは、現在βテスト期間中のノーコード開発プラットフォームClickのβテスターにも参加してもらおうと考えています。

Clickでは毎週βテスターの方々のフィードバックを元に機能を実装していますが、小学生ならではの視点からのフィードバックも反映されれば、より多くの人にとって使いやすいプラットフィームにすることは出来るのではないかと期待しています。

一般的にオープンソースのプロジェクトの開発に携わるのは実務経験のあるエンジニアがほとんどですが、βテストの段階から子供も参加しているとなれば、オープンソースプロジェクトの在り方も変わってくるかもしれません。

ノーコードジャパンニュースでは、今後もけい君のアプリ開発の過程を紹介していきたいと思います。

 

【中敏弘】

NoCode Japan株式会社CTO。楽天株式会社にてアプリケーションエンジニアとして入社し、多くのプロダクトを手掛ける。また、国内外から参加者が集まる楽天ハッカソンやRTC(Rakuten Techonology Conference) の企画、運営を行うなど、様々なイノベーションに触れる中、ノーコード博士に出会う。博士と共に国内初のノーコードハッカソンを企画する中で、NoCodeの可能性を強く感じ、NoCodeJapan株式会社のCTOとして参画。現在はNoCode×LowCodeによるハイブリッド開発で気づいた知見を元に、国内初のアプリ版ノーコードプラットフォーム「Click」の開発に従事する。